
こうした否定論は、いつの時代にもいろいろなシーンで現れ、その多くが素人受けする言葉で一部の否定的な部分を全否定する極論が展開されるのが常です。
母里啓子 著『インフルエンザ・ワクチンは打たないで』
母里氏は「効果がないので1994年には小中学生への集団接種も中止されてしまった」とamazonの本の紹介文で述べていますが、この本のレビューには「集団接種が中止された1994年以降、インフルエンザ流行時、私の勤める大学病院では重症のインフルエンザ脳症の児が急増した」という医師のレビユーもあります。
この本そのものに対するコメントは避けますが、リンクしたamazonのサイトでの本人の紹介文と併せて、賛否両論のカスタマーレビューを一緒に読んでみてください。
この本に対するレビューを何人かの医師が書いていますが、肯定的なレビューを書いているのは専門外とも言える外科医1人のみで、実際に臨床現場にいる内科・小児科などの医師の怒りをも帯びた否定的なレビューが少なくないところが重要な点だと思います。
世間一般の大きな勘違いは「インフルエンザワクチンを接種したのにインフルエンザにかかってしまった!。なんで!?」と・・・インフルエンザワクチンに感染予防効果があるように誤解していることです。
「予防接種」と名前がついていますが、より正確に表現すれば、「重症化予防接種」であり「感染予防接種」ではないということです。これは、医療従事者なら常識です。
つまり、「インフルエンザワクチンは感染予防を目的としておらず、重症化や死亡を減らすことを目的としている」ことであり、タミフルなどの抗インフルエンザ薬の投与目的も、一部、予防内服として感染予防目的に使用されていますが、主目的は「重症化や死亡を減らすこと」です。
有効性については、科学的なエビデンスが最も重要なことは言うまでもありません。
そのための研究も、厚生労働省や日本感染症学会およびアメリカのCDC(疾病予防管理センター)などで行われており、いずれもワクチンおよび抗インフルエンザ薬の有効性を認めています。なおかつ、そのいずれも100%の有効性を認めているわけではなく、また、どちらも、副反応(副作用)の発生を否定しいません。
極論者は「有効性は100%でない=100%無効」「副反応が0%ではない=100%危険」という議論とほとんど変わらない論点を展開します。いわゆる優先接種対象者が「接種すべきでない」と断定していることを鵜呑みにして単純に接種を避けることは大変危険な事だと思います。
インフルエンザ感染が直接・間接の原因での死亡は数千人から数万人、一方、ワクチンや抗インフルエンザ薬の副反応による死亡は10人から多くても数十人。「私は感染・重症化のリスクよりも副反応のリスクを避けたいから接種しない」「私は副反応のリスクよりも感染・重症化のリスクを避けたいから接種する」というように、どちらのリスクを選択するか、ある意味「リスクの選択」と「リスク対効果」をそれぞれ自己判断するということだと考えます。
それでも「子どもにはその判断ができない」という問題は残されてしまいますが・・。
私は、肺の1/4を摘出した呼吸器疾患の既往歴を持っているので、積極的にワクチンも接種しましたし、感染すればタミフルの投与も行うつもりです。
★「新型インフルエンザ」のタグリンク記事に厚生労働省、日本感染症学会などのHPをリンクしています。有効性、副反応などが詳しく紹介されているのでエビデンスその他の参考にしてください。
参考までに こちらのブログ記事も「こどものおいしゃさん日記」

▲ by hahhanonkidane | 2009-11-21 01:59 | ■bloggerのひとりごと | Trackback | Comments(0)